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IOPC



「皆様、ごきげんよう」
「・・・随分、間があったな。前回から軽く1年は経過している」
「仕方ありません、作者のやることですから(溜息)」
「否定はしない」
「前回から時間が開きすぎた所為で、事件はかなりな進展を見せているようです」
「進展・・・? 何か嫌な予感がするが・・・」
「いいえ、今回はまともな進展です。Hebei Sprit号の船長と乗組員が保釈されました」
「ほぅ、それはそれは」
「あら、驚かないのですね」
「保釈では喜んでやらん。完全なる解放のときまではな」
「そうですね。まだ完全に無罪となったわけではありませんし、これからが勝負です」
「ふむ、ところで今日はどうした?」
「はい?」
「いや、今日は何の為に呼んだのだ? まさか事件の進展の報告だけの為じゃあるまい?」
「そうですね。本来はもっと事件について突っ込んだ報告をしたいところなのですが」
「ならば、そうすれば良いではないか」
「いえ、そうしたいのは山々ですが、なにぶん現状把握だけで精一杯ですので、今回は別のテーマでお送りしようか、と」
「現状把握?」
「そうです。以前もお話した通り、この事件は非常に多岐に渡り影響を及ぼしている事件ですよね?」
「そうだな。軽く思いつくだけでも海域の環境や水産物資源、海域の住民達、Hebei Spirit号船長や船員、保険会社、ITFやINTERTANCO、INTERCARGOという所かな」
「改めて挙げてみると、とんでもない所にばっかり喧嘩を売ってますね、この事件・・・」
「業の深い事だ」
「まったくですね」
「それで?」
「あぁ、話が逸れましたね。今回からはリハビリがてら、改めて彼の国が喧嘩を売ったところを解説してみようか、ということらしいです」
「ほう?」
「正直、この件は膨大な知識が必要です。事実、この事件は物流・・・とりわけ海運業を根底から否定するような話ですから、海運の事を知らなければなりません」
「ふむ?」
「ところが一口に海運といっても商船やタンカー、貨物船など、実に多岐に渡る業種がありますよね?」
「そうだな」
「また今回の事件は海難事故の補償ということで、保険事故として扱うべきか否か、裁判次第ではまさしく天文学的な金額がどちらか一方に降りかかります」
「なるほど」
「ということで、保険の仕組みなどについても多少はやるべき、とも思いますし、それにはどういった保険があるのか、扱う会社や補償の範囲、内容といった部分・・・」
「む?」
「更に補償を受けたら受けた、で何処からどう保険金を引っ張ってくるのか、が問題になりますし、そうなると世界の海運業者の注目の的となっているこの事件の動向次第では、韓国への就航をどう扱うべきか、と言う点にも触れねばなりません」
「まぁ、そうだろうな」
「海運業は大きくまとまっています。それこそ全世界が一丸になっていると言っても過言ではありません」
「お・・・おい?」
「要するに敵を作りすぎたんですよ・・・それこそまとめる為には世界の海運業どころか物流の全てを知らなくては話にならないくらいに・・・」
「・・・」
「先ほども貴方が仰った通り、世界中の物流業界に関連する殆どと言ってもいいくらいの企業や組合を敵に回しました」
「(駄目だこれは・・・完全に逝ってしまっている・・・)」
「聞いていますか!? アーチャー!!」






















ただいまご機嫌ナナメなライダーさんがアーチャーに愚痴ってます。少々お待ち下さい。






















「ふう」
「・・・気が済んだかね?」
「えぇ・・・どうもお付き合いさせてしまい、申し訳ありませんでした」
「ともあれ、今回から関連部署のそれぞれについて触れていこう、という事で良いのだな?」
「そうです」



「アーチャー? 何処に居るの?」
「む? マスターがお呼びだな」

ガラッ

「あぁ、ココに居たのね。あら、ライダーも?」
「お久しぶりです、リン」
「そうね、大体1年ぶりって所かしら?」
「そうなりますか」
「ところで、ココに居るって事は?」
「そうです、授業の続きを、と思いまして」
「あら、面白そうね。今回はどういったお話?」
「はい、IOPCという所をご存知ですか?」
「IOPC?」
「International Oil Pollution Compensation Fund・・・日本式に言うと国際石油汚染補償基金(国際油濁補償基金)と言ったところか」
「長いわね」
「こういったものは判りやすく、が基本ですし」
「逆に判りづらくなっている気がするんだけど?」
「そうは言っても字面を見ただけで判るようにする為には多少の冗長さも必要だろうよ」
「そうかもしれないわね・・・それで?」
「それはですね、あまりに長く開きすぎたのでリハビリがてらに云々・・・」
「かくかくしかじか、ってことね。なるほど」
「(よく判ったな・・・)」
「ん? 何? アーチャー?」
「いや、なんでもない」
「ふふ・・・さて、それでは本題と行きましょうか」



IOPC(国際石油汚染補償基金 or 国際油濁補償基金)



「IOPC(国際石油汚染補償基金 or 国際油濁補償基金)は、簡単に言えば船舶が海難事故を起こした際に、漏れ出した荷油や燃料などによる環境汚染への補償を、加盟国から集めた保険料を元に行おう、というモノです」
「全然簡単じゃない・・・」
「いや、文字にすると長いだけでやってることは単純だ・・・海上保険を国単位で行っているだけだからな」
「なら民間の保険会社だけで事は足りるんじゃないの?」
「それが本道だとは思いますけどね。それだと保険会社にとっては致命的なリスクとなりうることから免責とされているようです」


筆者注:ココで一つお断りをさせて頂きます。
 今回、海上保険を保険会社などのHPなどを参考に調べましたが、どうにも油濁汚染に関する保険商品は見当たりませんでした。
筆者が調べた中では事故を起こした船そのものに対する補償や、事故船に積載されていた荷物に関しての補償内容は見当たりましたが、油濁汚染に関する補償内容は見当たりません。
これに関しては目下調査中ですが、基本的に保険会社の保険というものは多重契約を結んでいても、その中のどれかが補償したものについてはそれ以外の保険は補償しない、という考えに基づくものだと思われます。
判りやすく言うと「ある1つの保険契約に対してA社B社C社の3社が保険契約を結んでいた・・・そして実際に事故が起きた際、取りうる方法は基本的にA、B、Cの3社のうち、どれか1つの会社が補償するだけで、他の2社は補償しない」とするものです。
この考え方からすると、基本的に油濁に関しては賠償額が天文学的になることを考慮し、国際的な基金を設ける事で油濁に関しては基金が面倒を見よう、だから保険会社は免責でいい、という考えに至ります。
尤も、この考えは某保険会社のHP内において免責事項に事故を起こした現場の原状回復費用や油濁に関する補償は免責事項となっていたため、筆者の勝手な憶測であり、実際のところは不明です。
詳細が判明次第、再び授業内で取り上げていきたいと思いますので、現段階では何卒ご容赦頂きたいと思います。


「実際、韓国においては事故後、何故か事故現場付近に転居するものが急増したそうだ。明らかに賠償目当てだろうな」
「なによそれ、そんなのちょっと調べたら判るじゃない。どうしてそんなすぐバレる嘘なんかつくのよ?」
「理解しがたい事だがな。彼の国には『泣く子は餅を一つ余計にもらえる』とかいう諺があるそうな」
「『水に落ちた犬は棒で叩け』という諺もあるそうですね・・・犬とはインドの船長たちの事を言っているのでしょうか?」
「だろうな・・・彼らを叩く事で自分達の懐を潤そうとでも思っているんじゃないのか?」
「見下げ果てた奴らね・・・」
「なに、今に始まったことじゃない」
「おかげで事故の査定が思うように進まず、査定期間を1年延長した、とのニュースも入ってきています」
「中には補償金目当てに操業再開したはいいものの、運転資金が間に合わず泣きが入っている業者も居るそうだ」
「取らぬ狸の皮算用・・・この諺がこれほどしっくりくる事件もそうはありませんね」
「そんなの自業自得じゃない」
「まぁ、それはそれとして、あらためてIOPCについてお話しましょう」
「そうだな」
「IOPCは本部所在地はロンドン、加盟国は40ヶ国という所ですね」
「しかし、IOPCはややこしい事に2つの条約に基づいて構成されているらしい」
「2つの条約?」
「1つ目は1971年に結ばれた条約、2つ目は1992年に結ばれた条約です」
「ふうん・・・なんだかややこしいわね」
「まぁ、簡単に言えば1971年に結ばれた条約では対応しきれなくなってきたから1992年に新しい条約を結び、それを使っている、ということだな」
「なるほど」


筆者注:ココでまたもや1つお断りをさせて頂きます。
 上記で1971年と1992年に結ばれた条約云々とありますが、正確には1969年にも条約が1つありました。
1969年に結ばれた条約はCLC条約、1971年に結ばれた条約はFC条約と言われております。
実際は1969年に結ばれたCLC条約は民事責任条約の制度だったため、油汚染被害者の救済にとって不十分な点があり、補完的な補償制度として1971年にFC条約が結ばれました。
今現在においては両条約とも新条約(1992年条約)の成立の為、廃棄されています。
しかし、IOPCの基本理念としては1971年のFC条約と1992年条約を元に作られているため、あえてFC条約と1992年条約の2条約と致しました。
あしからずご了承下さい。


「ココで特筆すべきは補償金の単位ですね」
「うむ、IOPCで使われているのはSDRという通貨単位だ・・・正確には「通貨」とは言いがたいのだが」
「SDR? 聞いたこと無いわね、何処の国で使われているのかしら?」
「はい、SDRは『Special Drawing Rights』の略で、日本語約すると『特別引出権』とでも訳すのでしょうか」
「特別引出権? どっから引き出すの?」
「IMF(国際通貨基金)だ」
「IMF・・・って、簡単に言えば世界中の銀行の中の銀行よね。なんでIOPCにIMFが絡んでくるのよ?」
「えぇ、それを理解するために、失礼を承知で質問を質問で返しますが、今現在、最も安定した通貨とはなんでしょう?」
「え? それは・・・やっぱり米ドルかしら?」
「それは違うな、凛。確かに世界に流通している貨幣の中では抜群の信頼度と流通量を誇ってはいるものの、例のサブプライムローン関係で今や世界的にドルの信頼度は以前と比べて揺らぎかけてきている」
「なによぅ、米ドル以外で・・・って言ったら・・・ユーロ? あんな欧州限定の寄り合い通貨なんて普遍的な価値を持つものかしら?」
「中々な毒舌ですね(笑) まぁ、米ドルがこれほどに流通しているのはエネルギー・・・とりわけ石油関連の決済に使われているためです。そんなわけで世界的に米ドルほど流通している通貨もないわけで、それゆえに貿易間の決済での主な通貨は米ドルですね」
「それじゃ一体どの通貨が安定してるってのよ?」
「正直、どれもこれも一長一短だ。世界は広いとしか言いようがないが、地球規模の統一政府でも作らん限り絶対不変かつ安定した通貨など作れない」
「今の世界情勢を見る限り、そんな事は不可能です。ですのでIMFが加盟国やこういった基金に対する準備金という形でSDRという『通貨』のようなものを作っている、と思っておけばよいでしょう」
「なるほどね・・・」
「そしてSDRの具体的な価値はどれほどか・・・ということだが、ユーロ34%、日本円11%、英ポンド11%、米ドル44%を平均した値となっていて、1SDRはおおよそ1,5米ドルほどの価値がある、と定義されている」
「なんだか頭が痛くなってくる話ね・・・」
「まぁ、実際は日々為替レートが変わってくるワケで、実際問題あくまで目安として1,5米ドルとしたが、当然のことながら値は変動している。詳しく知りたければIMFのページでも見てくれ」
「頭が痛いのは冬木の問題だけで充分よ。あくまで目安ってことでしょう? ならそれでいいわ」
「そう言って頂けると有難いですね。正直、この問題は正確を期すなら毎日IMFのページを見て日々更新しなければなりませんので、ちょっと無理があるか、と思っていたところです」
「ふ・・・そういう事は更新を頻繁に行うマメなサイトオーナーのすることだ。書くネタに振り回されている筆者ごときが出来るものか」
「し、それはトップシークレットですよ、アーチャー」
「む、これは失言だった」


interlude...


「さて、SDRの事もお話しましたし、具体的にどれほどの補償が受けられるのか、という事についてお話しましょう」
「そういえばそうね、MAXでどれほどの補償があるの?」
「約8,977万SDRだ・・・2010年4月11日現在、1.00 特別引出権 (SDR) (SDR) = 141.3147 日本円 (JPY)だそうだから、12,685,820,619円、おおよそにして126億8500万という所だな」
「ふむ・・・となると、これを超えた分は?」
「当然、他が負担せざるをえませんね」
「でも、ちょっと待って。確かこの授業の最初で被害額は378億5900万円って言ってたわよね?」
「そうですね。それに関しては当時のニュースにて報道された額を使用しましたが、上記で触れました通り、なりすましが多そうなので、本当の被害額を確定するのは至難でしょうね」
「どうしたものやらな?」
「それは当然、なりすまし・・・当時、住民票が事故現場付近になかったり会社だったら操業している痕跡がない請求はシャットアウトするしかないでしょう?」
「それが出来たら良いなぁ?」
「何よ、その含み笑いは・・・前から思っていたけど、アンタのその笑い、精神的によろしくないわよ?」
「いやなに、彼の国で性善説を信じるものは・・・という所かな」
「ストップです、アーチャー。それを言ってしまっては話が進みません」
「おっと、すまない。マスター、そのあたりはまた別の機会にとっておこう」
「うう、なんか納得いかないけど・・・まぁ、いいわ。」
「さて、話を戻しましてまとめますと、IOPCは2つの条約から成立しており、そのうち油濁に関する賠償請求のMAX額は8,977万SDR、日本円にしておおよそ126億8,500万円と言った所ですか」
「そんな所だな」
「ちょっと簡単すぎない?」
「そうですね、ちょっと端折りすぎた感もありますが、要は成立した経緯と補償額が判ればそれでいいと思いますが?」
「なんか納得いかないわね・・・」
「とはいえ、IOPCに関する事を丹念に調べていたら、それだけで本が書けるぞ?」
「まぁ、今回はリハビリがてら書いてみた、という側面もありますし、筆者にやる気があればそのうち追記するでしょう」
「前回から1年以上も経って書いたのがトリビアもどき、というのが納得いかないだけよ」
「(苦笑)」
「まぁ、そのあたりは筆者に期待するしかありませんね」
「大丈夫かしら・・・?」
「この事件、調べれば調べるほど実に数多くの知識が必要になってくるからな・・・まぁ、気長に書かせればいい」
「そうですね・・・次回に期待しましょう」



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