船長
「今回は被害に遭われた船長達にスポットを当てたいと思います」
「なんだか話が急に進んでるわね」
「まぁ、今回は番外編、みたいな形にしようか、と思いまして」
「別にいいけどね・・・船長ってHebei Spirit号の船長でしょ? インド人の」
「そうだ。インド人というのは基本的に論理に強く、物事を正確に捉えるのが得意な民族であるという事は知られていると思うが・・・」
「そうなのか?」
「そうよ。数学になくてはならない『ゼロの観念』を生み出したのはインド人だし、仏教の祖もインド人だしね」
「いや、別に仏教は関係ないと・・・」
「甘いわね、衛宮くん。仏教は奥が深すぎる『学問』なんだから」
「そうですね。基本的に宗教というのは神話に基づいたものから、身近にあるものを神格化するものまで、様々な形態がありますから・・・」
「端的に言うとキリスト教やイスラム教は神話に基づいた逝っちゃった系で、仏教は逝っちゃった系に属しつつも精神的に成熟したもの、日本の神道は神話に基づいた逝っちゃった系でありつつも身近なものを神格化し、精神的に鷹揚という所かな」
「・・・世界の半分以上を敵に回しそうな発言ですね、それ(汗)」
「なに、日本の基本は無宗教だ。あえて言えば神仏混交している時点で世界の8割以上は敵に回している」
「その中でも仏教はマシな方よ。少なくとも積極的に戦いはしないから」
「論戦になると恐ろしいまでの論理力と破壊力を誇りますけどね・・・」
「なんか話がズレてきてるぞ・・・」
「おっと、そうでした。インド人から話が飛びましたね(汗)」
「基本的にアジアの船の大半はインド人の船長が活躍している」
「うわぁ、こんなに多かったの・・・」
「これだけの数が・・・(絶句)」
「改めて見てみるとアジアの船はインドの船と言っても過言じゃないような気もしますね(汗)」
「それだけインド人の船長は有能で頼りになる、ということだろうな」
「しかし、その中でもHebei Spirit号の船長は『特別』だったようです」
「特別?」
「えぇ、Hebei Spirit号の船長の父親はインド海軍の提督だった、ということです」
「へぇ・・・」



「って、(`□´/)/ ナニィィイイイ!!



「そんなに喜んでもらえて光栄ですね(笑)」
「いや、喜んでないし、ヘタすると外交問題にもなりかねないんじゃない?」
「まぁ、正直、だからどうだ、と言われればそれまでなんだがな」
「今のところ、インド政府も提督のご子息だから、と特別な計らいを図っているわけではありません」
「うーん、冷静なんだか暢気なんだか迷うところかな」
「いえ、たぶん理知的なんだと思いますよ」
外面如菩薩内心如夜叉というところだろうな」
「それ、外交で一番怖いパターンじゃ・・・」
刃の下に心と書いて忍と読むのです♪」



(怖!)



「まぁ、冗談 はさておいて、次の一文を是非読んで欲しい」
「これはHebei Spirit号の船長の家族が関係各所に宛てた手紙です」



   「D.R.Syam准将からの手紙」


インド海軍D.R.Syam退役准将とその家族から世界の皆様へ。

 私たちは、彼らが原因で無い原油流出事故のせいで、韓国当局によって不法に拘留されているJasprit Chawla船長、およびChetan Syam一等航海士に
速やかに正義が行われるよう、助力を求めます

 韓国泰安沖で安全な停泊地に停泊中のHebei Spirit号に、サムスン重工のクレーン艀が衝突してからもう1年以上が過ぎようとしています。
 以来、さまざまな不幸な出来事がありました。
 一番不幸なのは、原油流出と、それに続く海洋汚染による周辺海域の生態系への壊滅的な被害、そしてそこに住む漁民の皆さんの生活が侵された事です。
 世界中の同情が彼らに集まっています。
 事故と、その結果の原油流出が起こらなければ良かったと思います。しかし、事故は起きてしまいました。

 その後、韓国検察は韓国史における最悪の原油流出事故への責任追及を始めました。
 法廷での審問が開かれ、2008年6月23日、大田地裁瑞山支部において、Jong Chan Rho判事による二人への完全な無罪判決が下されるとともに、タグボートの船長らに対する有罪判決が下りました。
 Jong Chan Rho判事が韓国国民の激しい怒りがあったにもかかわらず、法廷における中立性と正義を守ったことは、敬意を表するに値します
 海運組織や組合、そして世界のメディアによる抗議が行われた、露骨なIMOの基準軽視の甚だしい韓国においてさえ、真の正義と公平性があり、二人の航海士に希望がある事を彼は証明してくれたのです。

 この判決はその後上告され、高裁へと評決の場を移し、世界とIMOの意見を軽視したまま、航海士たちへの拘留は続けられました。
 高裁での審問では検察とサムスンの連帯した(大勢の目に疑惑と映った)追及が続きました。
 そして2008年12月10日、世界を落胆させる、最も衝撃的な判決が下ったのです。二人のインド人航海士は彼らが引き起こしたものではない原油流出に対し、連帯責任と有罪判決を負わされました。
 世界は特に、判決が大方において、韓国政府によって設立された韓国海上安全部の事故調査報告を元に下されたことに衝撃を受けたのです。
 この報告書が全くの欠陥である事は明らかです。
 海上安全部はまた、その捜査手法においてIMOの指針を無視していました。

 何回もの抗議行動や調停活動がインド政府、IMOおよび世界中の海運組織・組合によって起こされました。
 残念な事に、これらの努力にもかかわらず、Chawla船長とChetan一等航海士は判決の直後、一般囚と同様に手錠を嵌められて歩かさせられるという辱めを受け、清州拘置所に収監されました。

 これは世界が手を出せずに見守る中で行われた誤審ではないのでしょうか?
 なぜ私たちはテロリストの攻撃や、海賊行為にかくも無力なのでしょうか?
 なぜ我々船乗りが、国際貿易の基幹を成す存在であるにもかかわらず、犯罪者扱いを受けなければならないのでしょうか?
 船乗りたち、特にChawla船長とChetan一等航海士は、その理由を知る必要があるのです。

 個人的なことを言えば、私たち家族は、すでに15ヶ月も一人息子の顔を見ていません。
 彼はインド海軍将官の息子として、厳しい軍人の規律と、倫理性の重要さ正義感と公平性を教えられて育ちました。
 彼が正義が失われたと信じず、なおも正義が韓国の異常性に打ち勝つであろうと信じている充分な証拠があります。
 彼が韓国清州拘置所から告げた、「神は、私がもうすぐ海へと戻れることを願っている」という言葉に、彼の職業への限りない愛が明らかに見えます。

 我々は、この航海士たちを落胆させてはならないのです。
 私たちはあなた方に、韓国政府が正しい判決を下してくれるよう、助力を求めたいのです。
 あなた方の家族、友人、また彼らの友人に、私たちが助けを求めていることを話してください。


   疲れ果てた家族より



(´;ω;`)ウッ…
「これは・・・ダメ、見てられないわ・・・」
「正直、筆者はこの一文を見てグッと来た、と言ってました」
「自分の家族が拘留されただけでも怒り心頭になっていても可笑しくないのに、一番憂慮しておられたのが韓国の漁民に対する同情の念、それから一審判決を出した韓国の判事には敬意を表されておられる・・・まぁ、表面的かもしれんがな」
「あんたって人は・・・どうしてそう捻くれてるの!!!!!」













































ただいま不謹慎なアーチャーを凛ちゃんがシメています。
少々お待ち下さい。













































「まったく、いいお話が台無しじゃない!!(怒)」













































筆者も反省しておりますorz













































「さて、話を戻しましょうか」
「(何気に何も無かったかのように話を進めるのね・・・)」
「(アーチャーの性格は聖杯でもないと治せそうもありませんしね・・・)」
「(あとでキッチリ「教育」しとくわ)」
「(フフ♪)」
「(な・・・なによ?)」
「(いえ、なんでもありませんよ♪)」
「(もう、次に行くわよ!)」
「(はいはい♪)」



「何を二人でコソコソやってるんだ?」
「なんでもないわよ!(怒)」
「(o;TωT)o" ビクッ!」
「乙女の秘密、というものですよ。シロウ」
「そういうものか・・・」


interlude...


「コホン、件のインド人船長達の話の続きですが・・・」
「このうえ、まだ問題があるというの!?(怒)」
「(地味に復活)韓国という国が、いかに可笑しい国か、という観点で話をしているわけではないが、どうしてもそうなってしまう」
「彼の国の魔術ですね」
「今度はどういう問題なのよ?」
人権問題です」
人権・・・ですって?」
「おや、どうしました? リン?」
「どうしたもこうしたも人権なんて利権屋どもが小奇麗な言葉で庶民からタカるくらいにしか思えない薄っぺらい言葉が大っ嫌いなのよ!」
「リン、これは真面目に言っていますよ」
「・・・どういうこと?」
「確かに日本においては何かと差別だのなんだの、と言いがかりを付ける為としか思えない胡散臭い言葉に成り下がっているが・・・」
「今回に限ってはあえて言います人権問題と」
「何があったんだ?」
「今回、囚われの身となった船長と航海士なのですが、敬虔なシーク教徒であり、戒律を厳格に守る人だったのです」
「そして彼の宗教には肉食を禁じている・・・要するに、彼らはベジタリアンという事だな」
「つまり・・・肉を食わせた、とでも?」
「そういうコトですね」
「(顔が蒼ざめる)」
「・・・それだけ?」
「それだけ・・・とは?」
「いや、肉を食わせることが、そんなに悪い事なのか?」
「はぁ・・・シロウ、世の中は日本のような柔軟性に富んだ国など、そうはないのですよ?(溜息)」
「まぁ、仕方あるまい。宗教だけは頭では理解し切れん部分が多々あるからな」
「いい、衛宮くん。普通の国の法律では、信教の自由を認めているわよね?」
「あ・・・あぁ」
「つまり裏を返すと信教の自由という「権利」に対して、出来るだけ周りはそれを尊重しなくてはならないワケ」
「そう・・・なるのか」
「そうよ。そして、その『信教の自由』に対して・・・ベジタリアンに対し、肉を食わせるというのは、最大のタブーと言っていいわね」
「そんな、それは極端じゃ・・・」
「それじゃ、もっとも判りやすい例えを出してあげましょうか。衛宮くん、貴方、イスラム教徒に豚肉を食べさせられる?」
「それは話が違うんじゃ・・・?」
「いいえ、同じ事よ。信教の自由は普通の国なら何処もが認めるところ・・・つまり、韓国は普通の国ではないってコトね」
「さすがはリン、その通りです」
「それに実際、2009年2月に船長たちが保釈を認められるまで実に1年以上、米と水しか口にしなかった、という事実もある」
[訂正]船長たちが投獄されたのは2008年12月で保釈は2009年1月でした(情報提供:借りてきた猫車スティルルームメイド氏)訂正すると共にお詫び申し上げます。
「・・・よく生きてたな(絶句)」
「『自由を与えよ、しからずんば死を与えよ』と言ったのは誰でしたか、宗教にも同じ事が言えるでしょう」
「確かに酷い話だわね」
「実は話にはまだ続きがある・・・家族が食べ物を差し入れようとしても、看守は受け取らなかったそうだ」
「・・・」
待て、マスター! その釘付きヌンチャクは(ry」
「はぁ・・・つくづく呆れる話しか出てこないわね」
「実際、いい話といえば先ほどアーチャーも言っていた通り、船長達は2009年1月に保釈された、ということくらいでしょうか」
「保釈じゃ意味が無いでしょう!」
「え? そうなのか?」
「はぁ・・・もうこの馬鹿弟子は・・・(溜息)」
「いいですか、シロウ」
「『保釈』というのは無罪とはイコールではない。あくまで判決の確定まで身柄を解放するだけだ」
「ということです」
「それじゃ・・・まだ船長達は?」
「未だ韓国のホテルに軟禁状態ですね」
「もう・・・何とかならないの!!!」
なりますよ」
「えっ!?」
「この問題の最大の問題点は韓国の司法が握っている事です」
「それは判るけど・・・」
「司法が握っているとは言っても、韓国は偽証がまかり通る国だからな・・・どうなるか、は判らんが」
「ですが、韓国は輸入依存度の高い国です。これが最大のポイントなのです」
「どういう・・・ん?」
「気付きましたか?」
「そっか・・・そういうコトね」
「話が見えん・・・」
「つまり、現時点で問題になっているのは船長達が保釈されているとはいえ、未だに疑いが晴れていない事ですよね?」
「ああ、それは判る」
「そして韓国は輸入依存度の高い国・・・前回も話したとおり、石油の備蓄量はわずか30日しかない・・・」
「そんな国が周りからボイコットされたら・・・どうなるか、衛宮士郎。お前でも判るだろう?」
「そんな・・・それじゃ、まるで『脅し』じゃないか!」
「いいえ、衛宮くん。これは『脅し』じゃなくて『正当な権利』よ」
「遠坂?」
「衛宮くん、貴方ならどうする? 明らかに向こうが悪いのに、こちらが犯罪者扱いされて投獄される国に喜んで行ける?」
「そ・・・それは」
「船に人が居ない間に勝手にぶつけられ、投獄され、人権問題にさえ意識が希薄な国に仕事だからと言って行けるのは善人でも職人でもプロでもない・・・ただの馬鹿よ」
「そんな・・・それじゃ、どうすればいいんだ?」
「簡単な事です。船長たちに無罪判決を出し、然るべき所に賠償請求を出せば済む事です」
「ま、そんなことをしたら韓国の屋台骨が揺らぐ事になるだろうがな」
「それは仕方のないことね・・・そして、私達に出来る事は精々が周りにこの事を広めるくらいかしら?」
「そうですね。日本のマスコミでこの事を報じた会社は寡聞にして聞きません」
「どうして日本のマスコミは報道しないんだ?」
「さぁ・・・どうしてでしょうね?」
「まぁ、ココでは畑違いになるから議論は止めておこう」
「最後に、船長の家族の写真がありましたので、載せておきます」




Hebei Spirit号の船長家族の写真


「ん〜・・・」
「どうしました? リン?」
「いえ、いつも思っている事だけど、どうしてインドや他のアジアの子って、あどけないながらも目に光が宿っているのか・・・ってね」
「そうですね。幼いながらも芯の通った光を持つ目をしていますね」
「おそらくは貧しい生活を幼い頃から余儀なくされ、生きる為に必死だから・・・だろうな」
「ん〜・・・俺には判らないけど、遠坂が言うんならそうなんだろうな」
「ばっ・・・馬っ鹿じゃないの!? あんたわ!!!(照)」












































え〜、ただいま照れ照れ凛ちゃんがアバレております。
オトメ心を理解できない朴念仁が黄泉平良坂を渡りかけております。
ちょうどキリが良いので今回の授業はお開きに致します。
毎度のご来訪、ありがとうございました。
















































願わくば、彼らに再会の祝福あらんことを







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